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原田健一さんが新潟大学に赴任して来られたのは何年前だったろう。
もう10年にほどになるだろうか。

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大学で「地域映像アーカイブセンター」というシステムを立ち上げ、新潟や近隣の県に「眠って」いた数多くの映像(写真)をインターネットで検索し、見られるようにするという、大きな作業には目を見張らさせた。

原田さんがいなかったら、角田勝之助という存在にも出会えなかった。

貴重な体験をいただいた。

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その原田さんが、ご自身でも「映像」作品を制作されていたことを、会話の端々で知った。
それを「展示」できないかと思った。

毎年冬に砂丘館の蔵ではmikkyozの新作を紹介している。
今年はその拡張版として、もう二人の人の映像を紹介してみることにした。その一人に原田さんをお願いした。
(もうひとりは現在上映中の大川景子さん。)

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mikkyozと同じような10分程度の映像をひとつ、じっくり見せてもらえたらというほどのイメージでお願いしたつもりだったのだが、
原田さんは、とても大きくこの話を受け止めてくださったようで、
これまでの映像のDVDを次々届けてくださったばかりでなく、
砂丘館全館に、自分のコレクションと近作の写真も展示したいという提案もいただいた。

では、そうしましょう。
と、いうことで、2階座敷を含む全館<原田映像&コレクション&写真展>になった。
映像は蔵の1階で今年になって編集が完成(一応)した「夢の中で倫理が生まれる」を、2階ではモニター画面にこれまでの映像作品を3つのプログラムで上映する、という、なんだか<原田健一全集>とでも言うべき内容にまで膨らんだ。

会期中、原田さんの希望で、若い頃から交流があったという堀川久子さんに会場で踊ってもらったが、
その途中で、なんと原田さんもパフォーマーとして闖入し、観客をびっくりさせる一幕もあった。


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原田さんの旧作群の共通点を一言でいえば「多動な映像」。
カメラが基本的に固定されたmikkyozとは、ま反対の映像群だった。

カメラは、動くは、反転するは、揺れるはで、目がまわる。
でも、そうして何日も、ちょっとずつ、付き合ううち、
その「多動」に、自分の目や身体が、いつしか慣れてきて、
なんとなく自然に共振するようになった。
全映像を(多分)見た堀川久子さんが「私、これ…なんか好きかも…!」と、叫ぶように、ささやくように、言ったけれど、

同じような感想が、私にも生まれていた。

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そして最終日。

夜の8時過ぎ……もう1時間で、会期が終わるという時刻に、蔵の一階に行った。
誰もいない。

前日までは何人かの熱心な観客がきていたが、このときは無人だった。

そこで「夢の中で倫理が生まれる」と、初めて、という感じで突然向き合った。
もちろん、何度も見てはいたが、主催者という立場は、なかなかフラットな気持ちで展示物を見られない(見にくい)ところがある。
このときもその主催者心から、最後の「記録」を撮ろうとカメラを手に、シャッターを押しながら映像を見はじめたのだが、見ているうち、なぜか、不思議な感情の高揚を覚えていることに気づいた。

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「夢の中で倫理が生まれる」はアイルランドの詩人イエーツの詩にある言葉だそうで、
映像では原田さん自身によるささやき声での
イエーツの詩の朗読が流れる。

アイルランドの島を訪れて撮影したのは20年以上も前の1990年代半ばだったという。
その後、ある人の写真を組み合わせた編集を構想したが、
それが頓挫し、
そのあとずっと未編集のまま放置されていたものを、
今回の展示のためにあらためて編集してまとめたものだと聞いた。


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この人の「多動」が、ここでは、すこし違ったものになっている。
映像・編集ともに、ある「抑制」が加えられているのだ。

以前の作品をたっぷり見たあとで、それがはっきりわかる。
多動と抑制という、異なる方向の力が、二人の相撲取りのように互いを押しながら、丸い土俵をゆっくり、重く、ずり動いていくような感じ。

何かがわかったような気がした。

何とそれをうまくは名指せない。が、
あえて言葉にすれば「ひとりぼっちが聞こえる」とでもいうような、そんな感覚を覚えた。

草や、木や、石垣や、突然現れる牛や、崖、海、波浪や陽光などの映像が、
水や、雲雀や、波や、風の音が、
ただの美しい自然の映像や音源であることを越えて、地鳴りのような振動となって、身体の底を響かせる。
映像を取り巻く壁の写真や、二階から降るように聞こえてくる里国隆の歌声が、その轟きに入り混じり、混淆乱舞を始める。

まるで、不思議な嵐のなかにいるような気持ちになった。

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このとき限りの、まったく不思議な体験だった。
(O)



by niigata-eya | 2020-02-23 09:00 | 砂丘館