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色彩と対位法 信田俊郎の新作展

信田俊郎の新作展が、ギャラリーみつけで始まった。

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去年は「グリッドから」というタイトルでの近藤あき子との2人展が砂丘館であった。
今回はどれもそれ以降に描かれた大作で、彼の近年の旺盛な創作力を感じさせる。

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新潟日報の「展覧会へようこそ」で、今回の展示を企画した外山文彦も書いているが、近作の油彩ではグリッド(格子)そのものは消え、縦長の四角形たちが独立して動き出したような感じがある(その傾向はかなり以前からあった)。


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それにしても、信田俊郎の絵が、「色」をめぐって描かれるようになったのはいつからだろう。
少なくとも、それが見る側(あるいは私)にはっきり感じられるようになってきたのは、2000年代に始まった水彩の制作からだった。
私は信田のグリッドへのこだわりを、「こだわり」と感じ、むしろある種の「つまらなさ」を感じてきたので、彼の水彩画展を企画したときも、グリッドが透けて見える絵は、たぶんあまり選ばないようにした。しかし、その水彩制作からも、グリッドの影は、消える気配はなく、近年の水彩はむしろグリッドへの強い回帰が感じられる。
油彩にいたっては、彼のグリッド志向は、もはやまぎれもない。
信田の絵の基本スタイルになってきた。確立されてきたとも言ってよさそうだ。

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ただ、そのグリッドは、前記のように、グリッドというより、グリッドが縁取る方形の集合のというか遊動体のようになってきていて、今回の新作群では、その「遊動感」が大変際立って感じられる。以前にもまして。

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あまりカタカナ名の美術家と比較は不得手というか、気が進まないのだけれど、今回信田の絵を見ていて思い出した名前があった。パウル・クレーとアルバースという画家である。
1986年に新潟市美術館でのクレーの晩年の作を中心にした展示を担当したとき、クレーの絵についての研究書を随分読んだ。その一冊にクレーの絵と音楽を論じたものがあった。クレーは「対位法」音楽を愛していた。対位法とは異なる旋律が同時に進行する音楽である。音は透明だから重なることができる。しかし絵の具(ことに油絵の具)は基本不透明だから、音楽のように重なりあうことが難しい。
クレーは絵で対位法的世界を生み出すことに腐心した。「パルナッソスに」という有名な絵があるけれど、その本ではその絵が、クレーの対位法絵画探求の到達点として紹介されていた。
そこでクレーはまず、方形による色面絵画を描き、その四角の上からモザイク風の点描で、別の色面を重ねた。下の色面(旋律)と点の色面(旋律)が見るものに同時に見える。そのような「色彩対位法」を編み出したとその著者は書いていた。「パルナッソスに」という題は有名な対位法音楽の教則本の題でもあったという。
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そのことをどうして思い出したかを書こうと思ったが、時間切れでここまで。
アルバースのことはまた。

(O)