八木なぎささんと話していると、
その声の平らさに気持ちが穏やかになっていく。
八木さんの以前の絵は、火山が煙を吹いていたり、強い色彩もあったりと、
けっこうドラマチックだった。
近作のリトグラフの作品は、左右対称の<鏡のなかの風景>という言葉が浮かぶような、細長い画面が多い。
昨夏の東京ではそのような作品だけで構成したということだが、
今開催中の新潟での展示では、その対称の片割れだけでひとつの作品となったものもある。
鏡のなかの風景から、その鏡をそっと外したような感じ
と書けばいいだろうか。
鏡は世界を映し
その平らで静謐な平面によって、熱い世界を鎮める。
目を近づけると、
仮想の箱のような空間に広がる、黒い霧の奥には、
やはり火山や波浪や地割れが起こっている気配が感じられるのだが、
それは鏡によって鎮められ、
またその鏡の撤去によって
宙に放り出されたような浮遊感を帯びている。
絵屋の格子戸から差す、曇り日の光がゆっくりと薄れ、
消えていく。
穏やかな八木さんの声のなかに、
展示室が浮かんでいるような心地がする。
(O)
by niigata-eya
| 2019-02-03 17:35
| エッセイ:絵のある風景