ギャラリーみつけ 伊津野雄二展巡回





















こどもたちは きずだらけの指で
美しい石を よりわける
そして もう
こどもではない 私たちは
木をひきぬき 野原や山をほりかえす
やがて よきものだけを うばわれた大地は
毒が満ち 木々は枯れ
ただ悪臭のただよう荒地となった
そして川は干上がり 海は濁り
空は光を失った。
天地はうたう
よいものもわるいもの
わるいものもよいもの
必要な時の流れ
うちすてられたもの 残されたものもまた
地から 涌出る
2つの黒い三ヶ月のように
浄化の時をへて満月を抱く
来たるべき 風が通りぬけるようにと
すべてが わかちがたく
そのすべての命である証として
書物のような腐葉土に
おまえは生まれるか
紙片は破れ
綴じ糸は解れ
印字は掠れ
うちすてられた その書物が
わすれ去られるときに
風のページを操るように
それを ひらこうと 望むときに
深く 埋もれた 種子がめを醒ます
時が そしてあなたが望むなら
この春の書物から
「春の書物」作者の制作ノートより