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図と地 【角田勝之助の写真「村の肖像Ⅰ&Ⅱ&Ⅲ」】

突然ですが私は田舎の生まれなのですが、

そのおかげで、田舎の空気がどんなものであるのか、よく知っている。

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田舎の共同体というのはアメーバのようなものなんである。
大勢いるような人の集まりも、この結びつきの中ではひとつの生命体のようなもので、そしてひとつの感情を共有している。

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図と地であれば、地である。

土台の、根っこの、ありのままの部分で、生まれた時から毎日同じ人と顔を合わせてばかりいるから、田舎の人付き合いは地が出るんです。

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図とはおそらくペルソナであろう。

よそゆきの社交の顔。腹の中も素性も知れない人と、なんとか感じよく交わるため、にゅっと自分のある一部を突出させる心持ち(またはその反応状態)のような気がする。

それで、昨今の写真というものは、どうも図ばかりなのであります。それが面白いこともあるけれど、たぶん大部分はそうでない。「表現」という名のもとに、想定された範囲内の自分および被写体を転写する。なんだかそういうものばかりを見せられていると、う~ん…、というお腹いっぱいな気持ちになるのです。



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それで、角田さんの写真はというと、これが「地」なんだなあ~。「地」のひとの笑顔。「地」のひとの寝姿。「地」のひとの酒飲み会。そして時に「地」のひとのひとり佇む姿。

ただ、懐かしい、昭和の、いい時代だった、写真ではない。

これは同じ共同体で「地」を共有する角田勝之助さんだからこそ引き出せた、「地」のひとびとの暮らし、姿。だから厚みがあり、写るひとの深さが伝わる。見ているとこちらの心までがほぐれ、その中にはいっていきたくなる。


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「なんだペルソナッテ?おれは、おれだで」
そんな声が聞こえてきそうな、
地と地でつながる金山の村の肖像。その感情は、ゆたかな笑いの連鎖で結ばれている。

(小)

2015年地域映像アーカイブ】
特別展示・角田勝之助の写真
村の肖像Ⅰ&Ⅱ&Ⅲ展

主催:砂丘館、新潟大学人文学部、新潟大学旭町学術資料展示館
企画:新潟大学地域映像アーカイブセンター

2015106()25()
9時~21時 観覧無料
砂丘館ではフォトアーキビストの大日方欣一さんがセレクトされた昭和20年代~40年代の写真約100点を展示しています。
同時開催の新潟大学あさひまち展示館では、10/1511/1まで角田勝之助さん撮影の動画を上映中です。
http://www.sakyukan.jp/2015/09/2953

by niigata-eya | 2015-10-21 11:44 | 砂丘館