潟から浦へ(佐藤清三郎と川北英司)・1
約2ヶ月にわたった会期も間もなく10日余りとなった。
前期は砂丘館の建物としては3回目となる、新潟市出身の画家・佐藤清三郎。


昭和初期、まだ堀や潟や路地が多く残る新潟の風景やそこに生活する人々を、おなじ一市民、無名の生活者としての視点から描いた。
今回の展示では、新潟の古地図とともに、清三郎の生きた時代の新潟をたどる試み。
往時を知らない世代も、知っている人も、その絵が描かれた時代を想うとき、また絵の深みも増して伝わってくるように思う。


清三郎の絵を見てあらためて感じたことは、絵はタイムカプセルのような力を持っているということで、描かれた風景や人やその気配から、空気の匂いや湿度、その時代にしかない時代の空気のようなもの、が、紙やキャンバスや絵具や絵の筆の質に、こもっていているのだなあということ。
経年変化のその変色や画材の変化も含めて、絵が語る“時”は、流れてきた時代と、そこにあった時代に見る人を誘う。
感想ノートには、美術館から流れてきたお客様が、「旅の最大の収穫は清三郎の絵に会えたこと」「佐藤清三郎の物を真摯に見つめる思い、絵に自分の全人生をぶつけようとする思いが伝わってきた」「絵が一つ一つ息をしていて語りかけてくるよう」などと書いて下さり、
描いた人の心情や精神までも含めて、描かれたもの(絵)には宿り伝わるものだと、思いうれしくなった。
実は、会場となった砂丘館のお屋敷も、佐藤清三郎の絵が描かれたと同じ昭和初期の建設で、
同じ時を経てなお残り古びてきた者同士が相乗して、洲之内徹も惹かれたひとつの時代の象徴としての空間を生み伝えてくれたのだと思っている。
(小)
「洲之内徹と現代画廊」と2人の画家
【前期】佐藤清三郎展
2014年4月12日(土)〜5月11日(日)
9:00〜21:00 観覧無料 休館日:月曜日

