2012.1②渡邊博展
千葉にアトリエがある。
新潟絵屋での個展は今回が4回目。
初日の展示室。
「倖いの飛来」 「紫の装い」 「情動」
「ことのは」 「自縛」
「切れ切れの記憶」
「奮起」
「秘匿」 「希望」
「透徹」
「追憶」
前日の展示完成直後。
夜も昼間も、それぞれにいい。
◆関連イベント
ギャラリートーク「見比べて楽しむ抽象画」
話し手・大倉宏(美術評論家)
1/23(月)15時〜 / 無料
右のイーゼルは、渡邊博さんの旧作で、人形などのかたちが見えていたころのもの。
左のイーゼルは村井勇さんの写真。
ほかにも片山健さんや小林久子さん、二村裕子さん、佐藤哲三さんなど、さまざまな作家の作品を紹介しながら、なぜ抽象作品は近づきにくいと思われるのかを探った。
手に持っているのはパネルに窓を切り取ったもの。
Oさんによると、絵は近づいたり離れたりして見るところに面白さがあるという。
近づいて見つめた時の感覚を、絵に窓を当て再現した。
作者の意図を読むのではなく、作品を見てどう感じているのか、耳を澄ますようにじっと自身の内面を見つめるという、Oさん流の作品のたのしみ方なども聞くことができた。
漆喰の壁面の、大きな水彩の作品を展示していたとき、ひとりが脚立に立ち、わたしはその人と絵との間で、絵をまっすぐな状態に固定する役割で立っていた。
鼻のてっぺんは絵にくっつきそうな距離だった。
作品「有為転変」は3カ所で吊った。
その間、釘を渡したり、ペンチを取りに行ったりしながら、3カ所の釘が固定されるまでを見守っていたのだが、出番がないとつい絵肌の質感を感じながら恍惚として絵に入り込んでいた。
ふいに絵がわたしの頭上に被さり、一瞬にして視界が暗んだ。
すぐに脚立の人によって視界は明るくなり、絵から突然引っこ抜かれた感じがあって、劇的で面白い体験だった。
▲「有為転変」部分
渡邊博さんは、なんて遠い世界に行ける人なのだろうと思う。
行き、帰って来られること。
見る側は絵によって、自身の広い世界へ出掛けて行ける。
(I)