食べもの、飲みもの、着もの、履(はき)ものという言葉があります。

「みるもの」は「見るもの」。

私たちの周囲は「見えるもの」でできています。「見えるもの」は、それだけでは、まだ「みるもの」ではありません。花を見、何かを感じた時、花は「みるもの」になります。
感じが「いい感じ」なら、それは「いいみるもの」。(「いい」は「きれい」「ここちよい」「おもしろい」という以上の意味を含んでいます。)
「美術」とは「いい見るもの」 となるべく、人の作る「みるもの」のこと。
「いいみるもの」には、場所を「よいところ」 にする力があります。(「よい」は「調和している」と「合っている」「いい雰囲気だ」という以上の意味を含んでいます。)

いい「みるもの」とよい「ところ」。それらを「いい」と感じる 「わたし」が歩いたレポートです。
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# by niigata-eya | 2018-10-31 17:34


「風騒ぐ家の人々 詩人 会田綱雄・三好豊一郎と画家 齋藤隆展」


生まれて初めて会った新潟の人は、お茶の先生で、白根の出身だった。

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白根の酒蔵に生まれて、0歳で旭川の酒蔵の養子に入り、銘木店に嫁いで、帯広にやってきた。

知り合ったとき、先生はすでに90歳を超えていた。お弟子さんはほかにおらず、いつも二人きりで、お手前を習いながらたくさんの話を聞いた。

お妾さんもいた時代。


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先生の昔話は登場人物がいつも大勢いて、何度聞いても覚えられず、話題も時代も行ったり来たり。先生と一緒にタイムマシーンの絨毯に載ってビュンビュン移動しているみたいだった。

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稽古が終わると、私の運転で先生のお孫さんがやっているお蕎麦屋さんへ。先生はお蕎麦は頼まず、代わりにいつも生の中ジョッキを一杯。それはそれはおいしそうに飲んだ。

「安曇ちゃん、私が死んだらね、部屋中からビールの空き缶が出てくるんだから」と、冗談を言って笑っていた。

かわいらしいもの、きれいなものが大好きで、帯広を離れてからも、旅先で何か見つけるたびに先生に見せたくて、買っては送った。

毎回必ず、直筆のお礼の手紙が届いた。

その後、先生は施設に入り、少しずつやりとりは途絶えて、数年前に亡くなったと人づてに知らせが届いた。

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今回の「風騒ぐ家の人々 詩人 会田綱雄・三好豊一郎と画家 齋藤隆展」では、齋藤さんの強い希望により、展覧会のカタログを作ることになった。

そこに寄稿をお願いし、寄せられた、池井昌樹さん、寺原信夫さんの詩に、今まで見ないようにしていた、先生の不在を今更ながら思い知らされ、胸のど真ん中をつつかれ、泣かされた。

16歳のとき、遊びに来た祖母が帰るのにつきそい、もらわれてから初めて行った白根で見たことを、よく聞かせてくれた先生が、不思議な縁で今、私が新潟に暮らしていることを知ったら、何て言っただろう。

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逝ってしまった人と直接話すことは叶わないが、齋藤さんは、会田さん、三好さんがこの世を去ったあとも、遺された二人の作品と対話を重ね、糧にして絵を描き続けてきた。


正直に告白すると、今年の初めに展覧会の予定を聞いたとき、

渋い、、、

渋すぎる、、、

これ、若い人、来ないわ、、、と思った。


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けれど、作品の撮影で福島へ行き、齋藤さんの絵を間近で見た時、あまりの迫力に度肝を抜かれた。


何これ!!おもしろい!!!!!!と興奮した。


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それから、齋藤さんの宝物である、会田さん、三好さんの書や絵を見て、三人の交流の証を目の当たりにできることの幸せを思った。

きっと、几帳面で優しいお人柄だったんだろうなあと思わされる、三好さんのやわらかな書と絵。

全身で瞬発的に物事の本質をとらえ、その勢いごと絵に表したような会田さんの「佐渡」や「会津の印象」。

割り箸を半分削って筆代わりに書いた書。


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そして何と言っても、これらの作品を砂丘館という空間に展示した大倉館長の力量には、本当に驚かされる。

「展示はおもしろい方がいいですよね」という大倉さんがいるから、砂丘館の展示は何をやってもおもしろく、今回も裏切りません!


展示作業中の蔵に入る度に、「うわ!」と声を上げて笑ってしまうくらい、一体、いつもどこから閃きが湧いてくるのか、、、。


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砂丘館は、10月30日から12月9日まで「風騒居」となる。


チラシや写真だけではこの迫力は絶対に伝わらない。好きとか嫌いとかわかるとかわからないと決める前に、まず、この空間に身を置いてみてほしい。

会田さんの朗読にじっと耳を澄ませてみてほしい。

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先生には間に合わなかったけれど、私に「荒地派」の存在を教えてくれて、田村隆一の名前から、息子に「隆」と名付けた札幌の三宅さんに、このカタログを届けられることを本当に嬉しく思う。

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砂丘館で携わる最後の展覧会が、私の大切な人たちをつなぐ、「風騒ぐ家の人々」であったことを、心から幸運に思っている。


砂丘館は、月曜以外、朝9時から夜9時まで開館しています!

(あ)


風騒ぐ家の人々 詩人 会田綱雄・三好豊一郎と画家 齋藤隆



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# by niigata-eya | 2018-10-31 16:55 | 砂丘館
「夏は妖」のつづきです。
隠れている存在が見えてくる展覧会でもありました。
渡邊博さんの作品は、たとえば梁や床の木目やしみなど、空間に潜んでいる絵の存在を引き出しているかのようでした。
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会期は8/10まででしたが、8/11.12に開催したナヲシテツカウさんのうつわのお直しご相談&ご注文でも、ご来店の方に「夏は妖」をご覧いただけるよう、展示をすこし改造しておたのしみいただきました。
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上・渡邊博 作品
下・片山健 作品
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上・蓮池もも「あお/あか」シリーズより

片山健さんの絵は、実は、2011年6月の個展で描かれたのものでした。
日頃はこの絵に保護の紙をあて、裏返しに戸板をはめているので見えないのです。
7年ぶりに目覚めました。

ナヲシテツカウさんのお直しでは、いろんなご相談がありました。
写真は、お直しの例。
金継ぎの場合
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ほかにも銀、錫、うるしでお直しします。
状態や仕上げ方法により、お見積もりが異なります。
接着材で応急処置してお直しが難しくなるということもあるのですね。

絵屋で愛用しているお茶碗も、この機会にお直ししていただくことにしました。
どんな姿で帰ってくるのか、仕上げの方法はお任せしました。
たのしみです!
ご相談にいらした方々から器にまつわるお話を聞かせていただいたのも、心に残りました。
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# by niigata-eya | 2018-08-23 12:49 | 今月の土壁
8/2〜10
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昨年は、スペイン人画家カルメン・ラ・グリエガさんの、日本で初めての個展を新潟絵屋で開催しました。
この夏は、そのときのご縁を発端に「妖」「気配」をテーマにしたグループ展を企画しました。
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お面絵付け:高橋郁丸

今回は、お客さまの姿がきつねやねこに化けたり、
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天狗ときつねのカップルが訪ねてくれた日もありました。
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墨絵:上原木呂「チミー一族」
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写真:村井勇「エヤノヨウカイタチ」

被写体は絵屋のどこか。
たとえば、エントランスにあるこの墨跡は「タラリヒョン」です。
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ほかにもガイトウ、クチカベ、エヤメガミ、ムンクギ、アサダケ、モジモジ、ホシノコ、イソリハルコなどの作品タイトルは妖怪のお名前で、村井さんのユーモアが隠れていました。
2010年の絵屋便(月刊の案内状)で1年間表紙に連載したこのシリーズは、今回、新たに13番目の妖怪「イソリハルコ」が加わり、光沢をおさえたニュープリント版で出品されました。
つぎの写真のシャベルも、実はエヤノヨウカイタチのモデルで、お名前は「クチダケ」です。
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イソリハルコのモデルは大倉宏が被写体になっていました。
またいつかお目見えする日をどうぞおたのしみに!

左の黒いシートの絵
カルメン・ラ・グリエガ「Soft light from the lake」
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人形:松本健宏「カッパ」
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蓮池もも「あか」シリーズ

はがき大のサイズに赤い絵の具で描かれたもの。
このシリーズの最後の40点は、かおを思わせるイメージが連続的にあらわれました。
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佐佐木實
上:「イ」
下:「感」
カタカナの「イ」はひとを表すそうです。
佐佐木さんの作品は、今回の構成を考えた時に必要な要素と思われて、出品をお願いしました。
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人形:加藤啓
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「笛を吹くサチュロス」
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「赤帽子と青いベールの人」
作品は漂流物から作られています。
2012年に絵屋に漂着したトレイと一緒に飾りました。
*2018年10月中旬に、加藤さんの個展と人形劇場パフォーマンスを予定しています。
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「海の天使」
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会期中には、台湾に帰国されたとあるお客様より3冊セットの妖怪の本が届き、高橋郁丸さんの『新潟の妖怪』(考古堂)、新潟妖怪研所の冊子『妖怪文化 創刊号』『新潟島 妖怪伝説ガイド』などとともにご紹介しました。
引き続きいつでもご覧いただけますので、ご希望の方はお気軽にお声がけください。

つづく

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# by niigata-eya | 2018-08-23 00:27 | 今月の土壁
8/17〜30
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