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Wave from Sweden 1


●スウェーデンからの波

西大畑・旭町界隈にある砂丘館・安吾風の館・旧斎藤家別邸・北方文化博物館分館・新潟大学あさひまち展示館の5施設で、スウェーデンの現代美術作家10組による展覧会が開かれています。
5館が連携して一つの展覧会を開催するというはじめての試みで、それぞれ魅力ある5つの歴史的建造物とスウェーデンのアートを、街歩きをしながら楽しめる企画になっています。


砂丘館では控室・奥座敷・蔵(ギャラリー)・庭の4か所を会場に4作家の作品を展示。
なかなかにコンセプチュアルで、解説がないとちょっとわからない、、という方もいると思いますので、今回は作品紹介を。

1.ヘレーナ・ヒルドゥールW「色」(控室)

5枚一組の作品と、2枚組+1点の作品を和室の床の間に展示しています。
今回来日されなかったヘレーナさんは、メールと写真のやり取りで、今回の展示方法を指示してくれました。
左手の5枚組の作品はグリーンの色彩が5段階で描かれ、右手の3枚は銀、グレイ、黒の3色の調和を表しています。
そして、下に置かれた笛は、見学に来ていただいた方が自由に吹けるようになっています。

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—色は、匂いや音楽によく似て、限りなく知覚可能で、時空を超えて感覚に訴えるもの—(パンフレットより)
その微妙な、繊細な、うつろいや混じり合いをヘレーナさんの絵は表現しているようです。
作品の中には金箔なども使われていて、遠いスウェーデンで描かれた絵なのに、不思議とこの部屋にしっくりとなじむ、
日本人の感覚にも寄りそうような心地を覚えました。



2.アンデシュ・ロンルンド(奥座敷・庭)

今回、来日して滞在制作を行ってくれたアンデシュさん。庭では、新潟大学の学生ボランティアの皆さんとともに制作した作品「ダンス」を、そして奥座敷では映像作品「亡き父は私にネクタイの結び方を教えてくれる」を展示しています。

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いずれも今回の展示のテーマはアンデシュさんのご両親がモデル。
「ダンス」をしているご両親の写真がありますが、これには実はとても重要で素敵なエピソードが隠されていて、トークイベントの際に、そのことをアンデシュさんがお話してくれました。
映っているご両親は今はもう亡くなっています。
映されたときは、お父様は80歳くらいで病床にあり、一日のほとんどを寝て過ごしていたそうです。
そんなとき、付き添われていたお母様が突然、お父様に「あなた、ダンスを踊りましょうよ」と言ったそうなのです。
そうして踊られたラストダンスをその場に居合わせたアンデシュさんが映像に収め、それをもとに写真に起こし、そのステップをコマ送りに粘土の上に型取りしたものが、この「ダンス」の作品の原型になっています。

約1年後、お父様は亡くなられ、しばらくしてお母様も亡くなってしまったのだそうです。
屋外に置かれたこの粘土のベンチは、風雨にさらされ、陽に照り付けられ、粘土は崩れ、ひび割れ、その「ステップ」の跡も次第に薄れ、消されてゆきます。
—同じままであるものは、何一つなく、自然の変化は私ではどうすることもできないこと—

「お葬式の席で、自分が一番の最年長であることに気づき、その中で自分が何をしていかなければならないかを考えさせられた」というアンデシュさんの、そんな思いが込められています。

(続く)
by niigata-eya | 2013-08-04 18:30 | 砂丘館